2005年7月29日

中国激流

『中国激流―13億のゆくえ』読了。


先日読んだ莫邦富氏の著作に比べると、中国に対する見方は厳しいものがありますが、決して嫌中・反中的な立場ではなく、きわめて中立的な立場で書かれてい ると思います。中国人からすれば、偏狭な見解と言われるかもしれませんが、国際的に見ても妥当なところに落ち着いているのではないでしょうか?

インターネットなど、新しいメディアに対する評価も、実際のところはこんなところだと思います。ネット人口は、中国ではまだまだ少数ですが、知識人 など中国をリードしていく人々が中心になりますから、やはりそれなりに重視しないとならないと思いますが、一方で都会と地方(農村)との格差が、恐らくあ たし達が思う以上に開いているんではないかと思います。

そんな中国だからこそ、やはりきちんと中国語を学んで、正しく中国を理解し、思いっきり中国人とつきあえるようになることが大切だと思います。

2005年7月15日

日中はなぜわかり合えないのか

『日中はなぜわかり合えないのか』読了。

莫氏の著作はそれほど読んでいるわけではないんですが、これは新書で電車の中で読むにはちょうどいいし、なにしろこんな日中関係の時期だからこそ知日派中国人の意見を知っておこうと思って...。

論調はいたって中立な感じを受けます。嫌中・反中人士から見れば、もってのほか、という意見なのかもしれませんが、あたしから見ればごくごくまっとうな意見に思えます。

ただ、日本人は中国人のことを理解していないと莫氏が語る時、それ以上に中国人は日本のこと知らないでしょ、という感想も抱きます。莫氏は中国のイ ンターネット世論の影響力や留学生をはじめとする訪日経験者が多数いて、そういう人たちの言説が中国人にも伝わっていると言いますが、それについては日本 人の方がはるかに数が多いはずです。

少なくとも日本では、あまりにも中国側に偏った意見・書籍であれ、逆に徹底的な嫌中・反中の言論でも、こうやって発表・出版できるわけで、この面で は中国に比べかなり進んでいると言えるでしょう。ただ、こう書くとすぐに、中国は言論の自由がない、何も知らされていないという極端な意見が出てしまうの が哀しいところです。

また、日中のこれからを何とかしなければならないと機会あるごとに警告を発してきたと書いていますが、本書を読む限り具体的にどうすればよいのか、 具体的には何も書かれていません。もちろん企業人・留学生・一般旅行者など、立場によって出来ること・すべきことは異なりますので、書きづらいところはあ るでしょう。一般論を書いても抽象的になってしまえば、あまり意味があるとも思えませんし。ただ、それでももう少し具体的な処方箋を開陳して欲しかったと ころです。(そういうのは金をもらわないと話してくれないものなのでしょうか?)

ただ、こういった不満を感じるものの、やはり今の日中関係をよりよいものにするためには、いったん不満を仕舞った上で、莫氏の意見に謙虚に耳を傾け、ささやかでも、できることからやり始めるという態度が一番大事なのではないかと感じました。

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2005年7月 7日

中国艶本大全

『中国艶本大全』(土屋英明、文春新書)読了。

前半、といっても半分より少なく、三分の一くらいは、中国の淫書の簡単な歴史概説で、後半が主な淫書・艶本の抄訳になっています。

この抄訳部分、同著者による徳間文庫『房中秘記―中国古典性奇談』とほとんど同じと言ってよいような中身です。

さて、内容が内容だけに肩の凝らないさっと読める本ですが、説明などがやや端折りすぎていて、中国文学や中国史を専門としてない人などには、やや理解しづらい部分があるかと思います。

また土屋氏は後半の各翻訳の最初に付けた書誌学的解説が邪魔かもしれないと書いていますが、中国学専門の私には、むしろこの部分をもう少し学術的に膨らませて欲しい、と思うことしきりでした。(翻訳は徳間文庫の方を読めばいいのだから......笑)

ただ、こういった解説を加えたから『...大全』なんていう書名なんでしょうけど、このタイトルは、やや大上段に構えすぎの感がありますね。