ジャンヌ・ダルク
著者の高山氏は、あたしの勤務先から刊行した『ジャンヌ・ダルク処刑裁判』『ジャンヌ・ダルク復権裁判』の編訳者で、この著書でもジャンヌ研究の基本資料となる両書を納戸も引用しています。
さて、この本はジャンヌ・ダルクという少女の一生を追うわけでもなく、なぜ火刑に処せられたかを探るものでもありません。ジャンヌとその時代を知ろうという人には面白くない、期待はずれの本かもしれません。
本書の主テーマは、ジャンヌ像の変遷、つまり、あたしたちがよく知っている(そうだと思いこんでいる?)いわゆる「ジャンヌ・ダルク」は、ジャンヌの死後どのようにして造られたのか、ということです。
ジャンヌは聖女が否か、あるいはフランス王室の血を引く者ではないかといった時代時代に湧き起こったジャンヌ論をわかりやすくまとめてあり、新書サイズでコンパクトなジャンヌ・ダルク研究史といった一書です。
少し前に読んだ、『マグダラのマリア―エロスとアガペーの聖女』が、マリアその人の生涯を知りたかったのに、「マグダラのマリア像の変遷、成立過程」を述べた本であったことにがっかりしたのと逆の現象が本書で味わえました。
それにしても、ジャンヌ・ダルクが魔女として処刑されたと思いこんでいた私は本当に西洋史に弱いです(涙)。
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