上のトップ画像は北京五輪2年前ほどの北京・東単交差点だったと思います。バック画像は西安の兵馬俑博物館に展示されていた武俑です。

2005年11月 8日

いまどきの「常識」

いまどきの「常識」』読了。

精神科医で最近は大学教員でもある香山リカさんが、世間で最近「常識」とされている事柄について、「え、本当にそうなの?」と疑問を呈したエッセイ(?)集です。

取り上げられている項目についての香山さんの意見は、基本的にあたしも同感するものばかりです。その一つ、イラクでの人質事件に端を発する「自己責 任」について、既に得をしている者が弱い者に対して「それは自己責任だ」といって切り捨てるのはまだわかるとして、昨今は弱い者までが「自己責任」を口に すると指摘し、それが「自己責任を追及しあって現実から目を背け」ている、自分が「勝者の立場」に立とうとしているという分析は、イジメと同じじゃないと 思いました。

クラスでいじめられないための最善の方法はいじめる側になること。これは悲しいけれど、小中学生の世界では真実です。それが、よくよく考えてみると大人の社会でも、装いを変えて行なわれているってワケですね。

確かに最近の若者は、誰が見ても危険な場所(国・地域)に準備もろくにせず出かけていきます。運良く無事帰国できると仲間内では英雄視される風潮も あるのでしょう。そういう面では政府の注意を無視してイラクへ行った日本人の行動を「自己責任」と追求するところまでは理解できますし、あたしもそう思い ます。

でも香山さんが言うように、マスコミも一緒になって「自己責任」を言い立ててしまい、「果たしてイラクへの自衛隊派遣が正当だったのか」といった、もっと本質的な議論がどこかへ行ってしまったことは非常に由々しき問題だと思います。

本書全般を通じて言えるのは、最近の日本は声の大きい人が言い出すと全員が右へならえして、その方向へ流れていき、それ以外の流れを排除しようとす る傾向が強くなっていると言うことです。先般の総選挙など、そのいい例だと思うのですが、脱稿の時期の関係か香山さんの興味が向かなかったのか、それにつ いては本書で語られていないのがやや残念でした。


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