チャイニーズ・シンデレラ
『チャイニーズ・シンデレラ』読了。
著者の幼少の頃から中国を離れイギリスへ留学するまでの、いわゆる学生時代を書きつづったものです。継母に疎んじられ、実の父にも見捨てられた主人 公(=著者)が、一生懸命勉強しついには海外留学へと旅立つ物語は、確かにシンデレラ・ストーリーと言えると思いますが、逆境に生きたとか悲惨な生い立ち であった、というのとはちょっと違うと思います。
確かに著者の小中学生時代は暗かったと思いますが、それでも著者を学校に通わせてくれていたわけですし、父はそれなりの金持ちでもあったようですか ら、この時代もっともっと悲惨な人生を送った人は、それこそ掃いて捨てるほどいたでしょう。そういった人の自伝や回想記も出版されています。
そういう観点から言ってしまえば、本書はあたしにとってはインパクトの弱い書であると言えます。でも、いたずらに悲惨さを強調し、そこに時代背景を 投影して、個人の努力ではいかんともしがたい大きな力や苦しみを描いたところで、救いのない話では気が滅入ってしまいます。それよりも、本書のように、決 してあきらめずに勉強に励み、父や継母、それに兄弟からは愛されていなくとも、優しいおじいさんや同居しているおばさんは確かに自分を愛してくれている、 そういう人が自分の周りにいてくれる、自分は一人(独り)ではないんだと、そっと教えてくれる本書のようなストーリーは読後感も爽やかです。
本書は大人よりはもう少し若い世代向けのようですが、そういった面でも本書のような悲惨さ具合がちょうどよいのかもしれません。
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