上のトップ画像は北京五輪2年前ほどの北京・東単交差点だったと思います。バック画像は西安の兵馬俑博物館に展示されていた武俑です。

2005年4月 7日

Uブックスの行く末

来月の新刊案内が出来てきました。5月はいろいろ盛りだくさんです。そんな中、「Uブックス」にデカルトの『方法叙説』が入ります。(書店の皆様、数日中には届くと思います!)

これまでUブックスは海外小説中心のラインナップで、シェイクスピア全集、チボー家の人々や名著『ライ麦畑でつかまえて』などがすぐに思い浮かびます。また、柴田元幸さんをはじめとした各氏による最近の海外文学作品の翻訳もずいぶんと充実してきました。

その一方で、その柴田さんや別役実さん、戸田奈津子さん、須賀敦子さんといった方々のエッセイなども最近では一つの柱として好評を博しています。

そういう海外小説とエッセイという二本柱がUブックスを支えていたのですが、最近は人文系のものが少しずつ混じり始めました。昨年は永らく在庫切れだった河口慧海の『チベット旅行記』もUブックス化されてしまいました。

埋もれていた名著をUブックスとして再び甦らせるというのはよいことだと思いますし、Uブックスの総合新書化というのも個人的には悪いことだとは 思っていません。多言語出版社・白水社の特性を活かし、ちくま新書や講談社現代新書に数点ほど入っているような語学読み物をUブックスに入れたいと、かね がね思っていたくらいですから。

今回『方法叙説』がUブックスに入るということで、Uブックスの総合新書化がますます加速されるというのは言い過ぎにしても、人文系にもジャンルを 広げるということは決定的になったと思います。でも、ポツンと『方法叙説』がUブックスの一冊になって売れるのでしょうか。Uブックスって、ほとんどの書 店で文庫・新書の棚に置かれています。大手他社の文庫・新書に比べ地味ですから、そんなにそろえてくれている書店も多くはありません。そうなるとどんなも のを書棚に並べるかというのが文庫・新書担当の方の裁量になるわけですが、人文系のUブックスはまだまだ少数ですから、外されてしまう公算が大きいのでは ないかと、個人的には密かに危惧しております。

また、Uブックスを文芸書(海外文学)の棚に置いてくれている書店さんも、それなりにたくさんあります。あたしとしては、これがもっとも効果的なU ブックスの売り方(並べ方)だと思っていますが、これも海外文学がUブックスの柱だという前提があればこそです。(エッセイの著者たちも、比較的海外文学 となじみのある方が多いですし...)

そんな中、『方法叙説』が入ってくる。果たしてどんな風に並べられるのでしょう。Uブックスには通し番号が付いてますが、人文系だけ番号を別枠で取 るとか、人文系だけガラッと装丁を変えるとか、なにかそういった工夫を凝らさないと『方法叙説』の行く末が心配です。今後、イデー叢書が順次Uブックスに なるのか、数ある全集の中の著作がUブックスに入るのか、そういった将来的な見通しが示されていないのですが、こういう機会に是非ともそういうことを含め て、今一度Uブックスというものを考えてみないとならないと思っています。あたしも微力ながら会議などで訴えていきたいと考えておりますが。

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