袋小路の男
『袋小路の男』読了。
と言っても、この短編集の中の表題作のみですが...。たぶん、今日、明日中には収録されている他の作品も読んじゃうでしょう。
さて、この作品ですが、「指一本触れないまま、「あなた」を想い続けた12年間」などと売り文句には書かれていますが、そういうジワッとしたもの が、あたしには今ひとつ伝わってこなかったです。男と女の違いかしら? 売り文句にはかなり引かれていたので残念、というか肩すかしを食らった感じです。
純愛もの、というにはあまりにも「愛」が描かれていないという気がします。否、この売り文句は出版社が勝手につけたものであって、作者はそういった 作品を書いたつもりはなかったのかもしれません。それとも、女性の愛情、それも今時のイケイケギャルではなく、じっと静かに秘めた愛を温めているようなタ イプの女性の愛情って、実はこういうものなのかもしれませんね。そう考えるといい勉強になる本です。
主人公が思いを寄せる(しかし、そんなに熱い思いを寄せているようには感じられないんですよね)相手は、主人公の秘めた思いに気づきつつ、遊んでる んだとしたら、罪な奴だと思いますが、それほど軽佻浮薄な人物には見えません。ごく普通に女性とも楽しく友達づきあいのできる人なんじゃないかと思いま す。そこはあたしと共通する感じです。でも、そういう付き合いって、はた目にどんなに仲良しに映っても決して恋愛関係には発展しないというのがセオリーで はないかとも思います。
ただ、場合によってはお互いに恋愛関係に変えたいという思いを秘めつつも、そこへ踏み出したら今のちょうどよい関係が崩れ去ってしまうのではないか という恐怖が先に立つのでしょう。つまり「友達以上恋人未満」の関係を「恋人」にするはずだったのに「友達未満」になってしまった、ということです。
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